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バイクで170km!中国留学で死の恐怖に直面した件を深掘り

どうも、うめぼしです。

最近、人生って楽しいな~
空って綺麗だな~、と
上を向いて歩いていたら、

路地から出てきた車に
ひかれそうになりました。

 

周囲の安全確認は大切ですね。
改めて、そう思いました。

 

そんな、死の危険を久々に味わったとき、
中国に留学したての頃味わった、

死と直面した強烈な体験を思い出したのと、
面白くタメになる話に発展しそうだなぁという

考えに至ったため、
このブログで共有します。

 

(今のいままで忘れていました。
あんなに強烈な体験だったのに…
なんで忘れてたのかは謎です(笑))

 

正直、経済的に安定して、
ちょっとのインフレが原因の
物価上昇があっても、

びくともしない状況なので、
事故に巻き込まれそうだったのは
たぶん、気が抜けてたんでしょうね。

今回のお話はそんな自分への
今後の戒めにも繋がることになりそう…。

結論、
その時の感情で縁を切ったら、
機会的損失凄まじいよね。
という。

 

気を引き締めてお話させて頂きますが、
このお話を読まれている
画面向こうのあなたには、

是非、楽な体勢で最後まで
読まれていってもらえると嬉しいです。

 

世の中を生き抜く上でも
結構大切なことをお伝えしようかと思います。

 

今回もストーリー形式で
書いていくので面白いかなと。
気づきや学びもあるので
ぜひ最後まで読んでくださいね。

悲しき大学デビュー

あれは僕が、
中国留学してから少し後の話。
当時、学校が始まる1か月早く、

中国に行って
私生活の準備をしてた頃。

僕のことを
上から縛り付けるものは
何もない状況でした。

 

とはいえ、日本に居た時みたいに
イジメられたくないと考え、

どうしようか悩んだ末、

髪を染めて大学デビュー
というものをしようと思ったんです。

 

心に余裕がある時は、
人間、気が大きくなるもので、

日本に居た頃の僕では
考えられないくらいの
行動力を発揮しました。

 

ろくに
中国語が喋れる状況で
ないにも関わらず、
寮近くの商店街的なところにある
比較的綺麗目な
美容室(と思しき床屋)に
入ったんです。

 

そこには、眼光が鋭く
世紀末なモヒカンを携えた
若い兄さんや

妙に色っぽい恰好の
お姉さんが椅子に座って
何かを喋っていました。

 

美容室の入口で
その光景を眺めていると、
二人が僕に気付いたのか
こちらを向き、

モヒカンの兄さんが
笑顔で話しかけてきました。

 

「いらっしゃい!
今日はxkdんふぁほん
kjvなしぇjんvks」

 

語学が半端な時に聞いても、
正直聞き取れません。

なので、
恐らく僕の要望を聞いてるんだな、
みたいな直観が働き
片言で

「ぼく、留学生、髪、
染める、流行色」
と伝えました。

 

最初、怪訝な顔をされましたが、
色っぽいお姉さんが
話しかけた後、

モヒカンのお兄さん
(以下、モヒカン兄さん)は笑顔で頷き、
カット台に案内し、
僕を鏡の前に座らせました。

 

「sじゃえうをあじdlk
djふぉsんk、OK?」

 

笑顔で両手を頭の上に持っていき、
丸を作って確認してきます。
何を確認しているのか分かりませんが、
とりあえず、頷きました。

 

その後もモヒカン兄さんは
場を和ませるため、
髪を染めながら、
矢継ぎ早に僕に語りかけてきます。

 

「skdjすkふうkじょj
ふぉあsjmsl、
djぁskじょうぃだよね?」

「dwにきうkk学生ksk
kほさんknksぢあ
ねsか~、笑顔が一番」

「tぎjxchけんkんb
ybvrkおwんgしh
j中国sがいj」

 

かろうじて単語は聞き取れるので、
笑顔を保ちながら

「はい」「はい」「はい」と

頷くことしか
その時の僕にはできません。

泣きそうになりそうな自分を
グッと抑え、鏡に映る引きつった笑顔で
頷いていきます。

 

はやく、、はやくおわって、、、
僕を解放して、、、

 

変な汗が額から落ちてきた時、
ようやくカット台から解放され、
シャンプー台へと促されました。

ホッとして
シャンプー台に横たわった時、
鼻炎気味の僕の鼻が
妙な異臭を嗅ぎ取りました。

 

あれ?臭くないここ?
アンモニア臭すごいんだけど…

 

異臭を感じ取っても
それを伝える術を
あの時の僕は持ち合わせてません。

 

怪訝な顔の僕を横目に
モヒカン兄さんは僕の頭を
シャンプーで洗い流していきます。

そんな僕の顔を
緊張していると思ったからなのか、
モヒカン兄さんは
より一層話しかけてきます。

 

「jfさひうぇjにv
びmdjヴぁい」
「はい」

「fじしぇいんsjdヴ
ぃいえんkkjfslk?」
「はい」

「わsずんkjんkふんkづ
bjヴぃdb、流行色はcみうぇじに、
じれじsこれから、
しgwせひにえい」
「はい」

 

機械的に会話をこなし、
ようやく
アンモニア臭のするシャンプー台から
解放されました。

 

そのまま先ほどとは
別のカット台に案内され、
髪を乾かしてもらいます。

髪が乾ききった後、
モヒカン兄さんはお店の棚から
何かの薬品を二つ、取り出し
ボールに混ぜ混ぜ。

凄い異臭を放つ、
薬品液の詰まったボールを
僕の顔の前に持ってきて、

「そあyhふぃえにうひfね?」
と一言。
僕の、「はい」を待たずに、
大きな刷毛っぽい何かでとり、
豪快に僕の頭へぬりぬり。


……匂いキツスギテ目をアケテイラレマセン…

そんな僕に構わず、
モヒカン兄さんのお喋りは笑声で加速。

いや、すげぇよあんた。。。
もう僕返事できてないのに、
よくそんな喋るよな、、、

その話してる独り言、
めちゃくちゃ内容気になるわ…


そんな僕の心の独白をよそに
モヒカン兄さんはまた僕の手を引き、

シャンプー台まで連れていく。

髪を洗い、またカット台のほうへ。


モヒカン兄さんに
乙女のように優しく髪を乾かしてもらい、
少し毛先を切って貰った僕が

鏡を通してみた自分自身は、

根本は黒く、
根本数センチ上から
毛先までが
金色のプッチンプリンみたいな
頭をした自分でした。

 

「すぁいsdふぇにskd」

 

言葉は分からずとも、
どうやら施術はここまでのようです。

一瞬、呆然としましたが、
「これは、今の中国で
流行している髪色なんだろう。

大丈夫、これでいこう」と

自分を鼓舞し、
お金を支払おうとモヒカン兄さんに向け、
「いくら?」と尋ねました。

 

「sjfぢwねいんしうえ、
ありがとう。200元」

 

ん?聞き間違いかな?

 

「いくら?」

 

「sjfぢwねいんしうえ、
だから200元」

 

え?20元じゃなくて?
200元?
今月の食費半分トブゾコレ……

 

これは、
事前に値段を聞かずに
勢いでいった
僕の明らかなミスな訳で、、、

事前に聞いておけば、
こんな値段で施術を依頼しなかったのに、、、

 

当時の僕は、
100元札を日本円の10000円札と
同じくらいの価値があるものと
脳内で置き換えて
生活してましたので、
ショックが半端なかったです。

 

震える手で財布から
200元を取り出し、
モヒカン兄さんに渡すと、

虚ろな目で
その美容室っぽい床屋を
後にしました。

 

その日は寮に帰って、
後悔で押しつぶれた僕は泣きました。

自分の不甲斐なさと
無駄にしてしまったお金のことと、
寮に帰宅中、
街中を歩いていても
同じ髪色の若い人とすれ違わず、

中途半端な髪色にされた後悔と。

 

とにかく、
意識が途切れるまで泣き続けました。

 

意識が途切れるまで泣くと、
案外すっきりするもので

翌朝は腫れた目をこすりながらも
意識を切り替えることができていました。

 

鏡に映る自分を見ながら、
「うん、かっこいいね。
大丈夫。
これなら髪が生えてきても
最初からプリンみたいな頭出し、
生え際は特に気にならないね」

と、謎理論を展開し
自分自身を納得させていました。

 

ある本に書いてましたが、
『人間は感情でものを買って、
理屈で正当化する』そうなんです。

 

例えば、
雑誌で偶々見つけ、
一瞬で欲しい!と
思ってしまった時計があったとして、

既に持っている時計は
まだ使えるにも関わらず、衝動買い。

 

「同じようなものを持ってるのに」
などと言われても、

「いや、必要なものだし、
いいものだから。
それにフォーマルな場でも使えるし」
という感じで正当化してしまうのが
人の性なんですよね。

 

今回の僕の場合、

衝動的に大学デビューを企画

美容室で施術

後悔はあったものの正当化

 

……当時の僕も含め、
自分が買ったサービスやモノを
無駄と捉えるのは
かなり力が必要かな、と考えています。

 

今でも、
現地人に中国で髪切ってもらうなんて、
良い経験になったし、
あの時の大学デビュー事件は無駄ではない、
とすら思っている自分もいまして、、、

 

そのおかげでこうして
ブログのネタにもできるので、
非常に有難いなと思うわけです。
(正当化)

 

 

さて、話がそれたため、
一旦本筋にもどしますが、
プリン頭で1か月の準備を終え、
留学生活がスタートしました。

 

学校が始まり、登校初日。
クラスの中は、
違う国の留学生で溢れています。

どこに座ればいいか分からなかった僕は、
あまり悪目立ちしたくなかったので、
一番後ろの席に座りました。

 

座ってしばらくクラスの様子を
ぼーっと観察していると、
「君、日本人?」と少し発音に
違和感があるような英語で
隣の席に座っている短パンTシャツで
スレンダーなスタイルのアジア系金髪女子が
声をかけてきます。

 

「うん。そうだよ。」
僕が片言の英語でそう答えると、

その娘は屈託のないまばゆい笑顔で
矢継ぎ早に言葉をかけてきます。

「ああ、よかった!
このクラスって欧米系の人が
多いから心細かったの!」

「私、フィリピンから来た
ムイって言うんだけど、
あなたのお名前は?」

「日本って素敵な国よね!
旅行行くならおススメの場所ってある?」

「あなたとお友達になりたいんだけど、
彼女っている?」

 

「ちょ、ちょっと待って。。。」
僕が片手を自分の顔の前に持っていくと、
そのムイと名乗った女の子は、
「あ、ごめんね」と軽く謝り

「ゆっくりでいいから、
あなたのこと聞かせて?」

と僕に会話の主導権を渡してくれました。

 

「えーっと、僕の名前はうめぼし。
さっきの質問の答えだけど、
日本なら沖縄とか
京都あたりがおススメかなぁ

彼女はいない~、
僕でよければ友達になってください」

「あ、そうなんだね!
早速だけど、今日のお昼って時間ある?
一緒にランチ行こ!」

 

やけに
グイグイくる娘だなぁ~と思ったけど、
その時の僕は
二つ返事で了承しました。

 

ムイちゃんが、更に話そうとした時、
ちょうど気怠そうな顔をした
中年男性がクラスの扉をくぐり、
教壇の前に立った。

どうやら先生らしい。
聞き取りやすいようにゆっくりとした英語で
軽く自己紹介した先生は

そのまま記念すべき最初の授業を始めました。

 

そこからは基礎的な中国語を学び、
会話の練習をした後、

あっという間にお昼休憩になった。

僕が通っていた大学は、
中国語を学ぶ語学学校なので

基本的にお昼までのカリキュラムが
一週間を占めている。

 

カリキュラムが終わり、
そのまま校内で
安く中華料理を食べれる食堂に
ムイちゃんと行き、

定食で付いてきた豚肉や

筍が湯気とともに輝きを放つ
チンジャオロースや

胃に優しい味がする中華スープを
飲み食いしながら、

お互いの故郷の話や世間話などをして
楽しく片言の英語で会話をしていました。

 

「うめぼし君、
 同じクラスでもう一人
 アジア人の男子がいるの気がついた?」

「いや、
 気が付かなかったけど、いたの?」

「うん。
 髪がちょっと青っぽくて
 目つきが鋭い人だったなぁ。
 なんか怖そうな雰囲気だったから
 話しかけれなかったけど。
 多分韓国の人っぽいかも」

「そうなんだね」

「わたし、怖い人苦手だから
 友達になれるかちょっとわかんないなぁ」

「あまり、怖い人だと難しいかもね」

「あ!でもでも、うめぼし君は
 怖そうな感じしなかったし、
 今は話しかけて
 すごく良かったと思ってるよ!(笑)」

「ムイちゃん、ありがとう…
 僕も同じこと考えてたよ!
 奇遇だね(笑)」

 

こうして、楽しいランチ会は終わり、
中国に来た後に
お互い用意した
プリペイド携帯の番号を
ムイちゃんと交換して帰路についた。

 

ムイちゃんも寮住まいとのことで、
一緒に寮まで歩き、
エレベーター前で別れ、
それぞれの部屋に戻った。

 

・・・そこから半年間、
根暗な元いじめられっ子には
相当過酷な毎日でした。

 

カリキュラムがある日は

朝登校


クラスで仲良くなった
ムイちゃん含め数名でランチ

帰宅後
中国語の反復学習

その辺の雑貨屋で
仲良くなった店主のおばちゃんと
覚えたての中国語で雑談


クラスの留学生仲間含め、
外のマンションに
部屋を借りて暮らす
ロシア人宅でホームパーティー

帰宅後
ウォッカを飲みすぎダウン

朝登校

…(振り出しに戻る)

 

みたいなルーティンを送り、
語学を磨き、

 

学校が休みの日は、
仲良くなった留学生仲間たちと

専ら町の中心地や
観光地に遊びに行ったり、

夜、
またホームパーティーに呼ばれて
たどたどしい中国語と片言の英語で
仲間たちと楽しく
ウォッカやテキーラに飲まれたり、

 

記憶をなくして、
いつの間にかムイちゃんの部屋で
一夜を過ごしたり、
(何もしてませんよ?いいですか?
何もしてないですからね!)

 

仲間と遊びに行かない日は、
一日中、中国語の勉強と
街に繰り出して会話の練習を
ひたすらしていたり。

(コンビニで飲み物買って、
 店員とずっと会話していたら、
 店長のおじさんに怒られ、
 出禁になりました)

 

 

上記のルーティンをこなしたおかげか、
半年後には生きてくことに
事欠かない語学力を
身につけることに成功しました。

 

やっぱり、
第二語学を習得するのに
手っ取り早い方法は

第一言語である母国語を
絶対に使わないってことですね。

違うクラスに日本人は居ましたし、
ホームパーティでも居ましたけど、
僕はあまり絡まなかったです。

理由は単純で、
・日本で過ごしてた時の
 嫌な記憶が
 フラッシュバックしてしまうから

・その国の言語を習得しないと
 この先やっていけないから

この二点に尽きます。
(まあ、留学生活の後半は
 多少絡みもありましたが)

 

僕は自分で言うのもなんですが、
当時は繊細で
貧弱な心の持ち主だったので、
つるんでしまったら最後、

日本人ということに甘えて
もうほかの国の人たちとは
交流できなくなる可能性が高かった
というのも理由に含まれるかなぁ、と。

当時の自分を分析して思いました。

 

まあ、生きてくのに
必要最低限な語学を習得して、

そんなドタバタした
日々を過ごしていた矢先、
ある事件が起きたのです。

こんなとこでもファン化!?ファン化の脅威

ホームパーティで記憶をなくし、
ムイちゃんの部屋で
一夜を過ごした次の日のこと。
どこから漏れるのか、
噂はすぐに広がるみたいで

僕とムイちゃんが
付き合ってるみたいな話で
クラス中もちきりでした。

(当の本人達は、
お互いに気はなく、
友達以上には発展しないと
宣言している状況でしたが、、)

 

そこでお互い
「なんか噂になっちゃったね~」
「朝から色々質問されちゃってるね~」
「なんかハイスクール時代を思い出すね~」
「もういっそ付き合っちゃう?(笑)」
「え?無理(笑)」
みたいなやり取りをしつつ、
その日の授業を終え、ランチタイムへ。

食堂だと、噂好きな子たちと
鉢合わせになる可能性もある為、

ムイちゃんと僕を含めた
仲良しグループとともに
学校近くの格安大衆食堂へ。

注文し終わり、
料理が来るのを待ちつつ
雑談していると、

 

「おい、こんなところで何してんだ」

 

と、白っぽい金髪を揺らしながら
小太りのお兄ちゃんが
ぶっきらぼうに
話しかけてきました。

 

一瞬、場が固まり、
。。。え?誰?知り合い?
みたいな視線が
僕らが座している円卓の上を
交差します。

皆、きょとんとした顔。

 

「お前だよ。お前」

 

と小太りのお兄ちゃんは僕を指さします。

 

「え?僕ですか?」と聞くと、
小太りのお兄ちゃんは頷き、
「てめぇ、うめぼしだろ?
昨日の夜、誰の女に
手を出したか分かってんのか?」

 

ん?身に覚えがない、、、
何言ってるの?
な視線を無言で送っていると、

 

「ああ!もう、ラチあかねぇな!
てめぇが手を出した、
ムイって女はな、この辺仕切ってる、
S君の女なんだよ!」

 

すかさず、ムイちゃんに視線を送ると、
ムイちゃんは全力で首を横に振っている。
…よくわからないけど、
ムイちゃんも身に覚えがないらしい。

 

「あの、話がよくわからないんですが、
僕はムイちゃんに手を出してませんし、
ムイちゃんに彼氏がいる
という話も聞いてません。
失礼ですが、人違いでは?」

 

そう伝えると、小太りのお兄ちゃんは
顔を真っ赤にして
「ああ?!
 俺が間違ってるって言いたいのか!!
 舐めた口きいてるんじゃねぇぞ!」
と今にも殴りかかりそうになったため、

 

仲良しグループの一人で度胸がある、
K君が見兼ねて仲裁に入りました。

 

「まぁまぁ、落ち着いて。
あなたの言い分は最もですね。
怒りも分かります。

きっとあなたは、情が厚く、
S君とは家族と
同じような絆を結んでいるので
尚更、怒りが増しているのでしょう。

ただ、ここで暴れてもつまらないので、
時間と場所を指定頂ければ、
うめぼし君を連れて
誤解を解きに行きますので、
まずは、話し合いの場を設けませんか?

この辺を取り仕切るS君とも
お話をさせて頂きたいので」

 

K君がそう言うと
小太りのお兄ちゃんは
少し落ち着いたみたいで

深呼吸すると、

携帯電話を取り出し、
どこかに電話を掛けました。

電話の相手が出てから数分後、
携帯電話が切れたみたいで
電話をポケットにしまい
僕らの方をキッとにらみつける。

 

「S君が今日の夕方、
学校近くのビリヤード場でなら
話を聞くそうだ。

絶対来いよ?

こなきゃお前を
どこまでも追い詰めて、
生きてることを後悔させてやる」

 

小太りのお兄ちゃんは僕に向け、そう言うと
いそいそとその場を後にした。

 

僕は何がなにやらよく分からず、
「ムイちゃん、何か心当たりある?」
と聞いた瞬間、「お待ちどうさま!」と
注文した料理が運ばれてきた。

 

料理の温かな湯気とは対照的に
僕らが座る円卓を冷たく重い
空気が包んでいた。

 

「もうラチがあかないし、
 料理が冷めるのも嫌だから、
 食べながら、状況整理しない?」
とK君の提案で、料理を食べながら、
皆が感じた内容や、
知っていることを持ち寄った結果、
以下の内容に整理できました。

 

1.ムイちゃんは誰とも付き合っておらず、
 絶賛フリー状態

2.ムイちゃんは誰が見ても
 アジアンビューティーな美少女
 (モテる)

3.たまに言い寄ってくる人はいるものの、
 上手くスルーしている

4.ムイちゃんは先ほどの
 小太りのお兄ちゃんも知らないし、
 S君なんて人も知らない

5.うめぼしは、
 据え膳を食えない根暗なヘタレ野郎

6.他にムイちゃんと
 同じ名前の人が居る説が
 今のところ有効

7.相手の勘違いを
 上手く正すことが
 解決のカギかも(K君談)

 

いや、今振り返ると
頼もしい仲間たちですね。

高校出たての
ティーンエイジャーとは
思えない考察力に驚きです。
(特にK君)

こうして、
ヘタレなうめぼしは、
K君に付いて来てもらうことを
固く約束して貰い、

夕方、指定のビリヤード場まで
足を運びました。

(ちなみに、ムイちゃんと
 その他の仲間たちには帰宅して貰い、
 3時間後、
 こちらから電話をする
 手筈となりました。

 3時間経っても電話がない場合、
 警察を呼んでもらう段取りで
 まとまりました。  (これもK君の提案))

 

 

築数十年は建つだろう年季を
感じさせる古いビルとは裏腹に

ビリヤード場の入口は
ネオン色で光る電光看板と
最近改装されたであろう
床や壁が輝きを帯びて、
異色を放つ。

 

今思えば、一人の時に
そこだけ新宿の
歌舞伎町に辺りにありそうな

一部の危険そうな風景を
切り取って
貼り付けたような

怪しい場所に入る勇気は
ないかもしれません。

 

K君という
頼もしい味方が居たから

入れたんだと思います。

そういう面で言うと、
味方を作るということは
人生を円滑に進める上で
非常に重要な要素

かもしれません。

 

K君と二人、意を決して
ビリヤード場の中に進むと
まず目に入ってくるのは

光を吸収して輝きを放つ
白い大理石調の床と
入口から受付カウンターまで
まっすぐに伸びる赤い絨毯。

その絨毯の上を歩き、
受付で雑誌を読んでいる
店員らしき男性に声を掛けた。

 

「あの……知り合いが
ここにいるはずなんですが」

店員が訝し気にこちらを見て、
再び視線を雑誌に落した。

「奥のエレベーター使いな。4階だ」

ぶっきらぼうに案内された通りに、
僕とK君は
エレベーターに乗り込み
4階のボタンを押す。

緊張感が増しているのか、
K君と僕の間で
会話する余裕はなく、

エレベーターに
乗っている時間が
凄く長く感じる。

 

不意に目的の階に
到着し、甲高いベルの音が
鳴り響き、
エレベーターのドアが開く。

ドアをくぐり、
複数のビリヤード台が
規則正しく配置された
薄暗い部屋、

その部屋の奥に
ポツンと光る蛍光灯に
うすぼんやり照らされた
ビリヤード台で
二人の男がビリヤードをしていた。

 

一人は
昼間に話しかけてきた
小太りのお兄ちゃん、

もう一人は、
青色の髪を揺らし
カンッと小気味よい音を
台上の玉通しぶつけ合い
奏でる男性らしき人物。

恐らく、彼が
S君と呼ばれる人物だ。

 

話しかけるタイミングが分からず、
二の足を踏んでいると、

僕らの存在に気付いたのか、
小太りのお兄ちゃんが
声を掛けてきた。

 

「何突っ立ってるんだ!
 早くこっちに来い!!!」

 

 

小太りのお兄ちゃんに
言われるがまま

僕とK君は、
唯一そのフロアで光が灯っている
ビリヤード台の前まで
足を運んだ。

小太りのお兄ちゃんが こちらを静かに
観察しているS君に耳打ちすると、

S君は小太りのお兄ちゃんに向け
「下がれ」
と一言言い放つ。

 

その指示を受け、
小太りのお兄ちゃんは
エレベーターの前まで
歩いていくと

壁に背を預け、
たばこに火を付けながら
こちらを鋭い目つきで
注視していた。

 

「君がうめぼし君か。
 ムイさんと仲良しな」

S君が口を開き、
鋭い目つきで僕らを射抜く。

その眼光の前では、 口から言葉が出ず、

昔のイジメられていた記憶が
唐突にフラッシュバックし、
無意識のうちに
冷たい汗が頬を伝う。

 

「昼間、
 あのエレベーターの前で
 煙草をふかしてる
 黄君が君らに対して、
 威圧的な態度をとってしまい
 すまなかったね。迷惑をかけた」

そう言うとS君は
僕らに向けて浅く頭を下げ、謝罪する。

それを見た瞬間、
僕の緊張は解け、ある疑問が
思わず口からあふれ出てきた。

「S君、って呼んでもいいかな?
 あのエレベーター前にいる、、
 黄君?は
 なんでムイちゃんのことを
 S君の女って表現していたの?

 ムイちゃんに聞いても
 身に覚えないって言ってたし、、、」

「ああ…嘘だろ。。。
 黄君そんな表現してたの?
 黄君に相談したのは失敗だったな……

 ……うめぼし君が疑問に思うのも
 無理ないね。
 実は、俺さ、、、
 同じクラスのムイさんに
 一目ぼれだったんだよね」

 

ん?同じクラス??
僕がきょとんとしていると
S君が察したのか、
「一応、俺、
 うめぼし君とムイさんの
 クラスメートなんだけどね」
とつぶやく。

 

そこで、ムイちゃんから
青髪のアジア人が
もう一人同じクラスに居ると
言われたことを思い出した。

また、冷たい汗が
背中を伝う感覚に襲われ、
少しめまいを覚える。

 

「あ、えっと、、、ごめん!
 まだクラスメートを
 全員把握できたわけではなくて…
 本当にごめんなさい!!」

「いや、いいんだよ。
 最初の一週間しか顔出してないし…
 親父の伝手で入った学校だから、
 行かなくても卒業できるし。

 それよりもさ、
 ちょっと自分語りに
 付き合ってくれる?」

 

そう言うとS君は
淡々とだけど、力強く、
ムイちゃんに一目ぼれした経緯を
僕とK君に語っていった。

 

 

S君とムイちゃんの
ファーストインプレッションは
初めての授業が始まる
少し前の教室前廊下。

S君が落した母親の形見の指輪を
一緒に探した時だったそうな。

「はい!これでしょ?
 端の方に落ちてたよ!」

そう言うとムイちゃんは
屈託のない笑顔でS君の手を掴み渡す。

「もう落さないでね!」

そう言うムイちゃんの親切心と
笑顔に包まれたS君は
一瞬で恋に落ちたそうで、

「あ、あ、あ、あり、ああありが、、」

ありがとうが言えず、
しどろもどろになっていると

「あ!いけない!
 教室に入らないと!
 それじゃあね!」

そうして風のように颯爽と
教室の中に入るムイちゃんの背を
見送ることしか
あの時のS君にはできなかったらしい。

 

「それが今でも凄い後悔でよ?
 隙をみつつ、その時の礼に
 食事にでも誘おうかな?って
 思ってたところに
 あのうめぼし君とムイさんの噂でさぁ…

 親父の部下で  年が近い黄君に相談したら
 真相を確かめてくるって言って、
 出てっちゃって、、、」

 

……なるほど、そういうことか。

僕が納得して口を開こうとした瞬間、

「そういうことだったんだね!
 で、あればS君は一旦、
 ムイちゃんへ直接謝らないとだね」

といままで静かに話しを
聞いていたK君が先に口を開く。

 

K君って、
怖いものなしなのかなぁとか
考えながら、
僕はS君の反応を待ちました。
すると、S君は
怪訝そうな顔で
K君を睨みながら

「なんでそうなるの?」

と反応します。

 

「うーん、と……
 まず、S君は黄君に
 相談した結果、

 ムイちゃんとその周りの人に
 昼間、怖い思いをさせてる
 自覚はあるかい?

 黄君、もう少しで
 うめぼし君の胸倉をつかんで
 喧嘩起こしそうだったんだよ?

 そのことについては
 僕らは謝って貰えたからいいけど、
 当のムイちゃんには
 怖い思いさせたままだよね?

 こういう表現が
 適格かは分からないけど、
 まだ自分のお尻を
 拭えていない状況で、

 今のS君はムイちゃんの心情的に
 マイナスのスタートっていう
 状況なんだよね」

 

反論をしようと
口を開きかけたS君を
K君は両手を前に出して制止し、
次の言葉を続ける。

 

「とはいえ、
 ピンチはチャンスって
 言葉もあるよね?

 ここでその言葉を
 現実化させるのであれば、

 まずはムイちゃんに
 誠意をもって謝罪してから

 仲良くなれるように関係性を
 構築していくべきだと僕は思うよ。

 あ、もちろんS君が望めば、
 僕らも関係性構築は協力するから!

 ムイちゃんに謝罪せず、
 このまま恋心をうちに秘めて過ごすか、
 ムイちゃんに謝罪して、
 関係性構築を進める努力をするか

 S君ならどうする?」

 

S君は眉間にしわを寄せ、
悩むような仕草で目を瞑る。

 

僕は二人の問答に
ハラハラしながら
ただ見つめるしかできなかった。

もし、ここでS君が逆上したら、
生きてここから
出れる心地がまるでせず、
心の中では想像上の神様に
祈りをささげるのみである。

 

「……謝ったら、
 ムイさんと絶対仲良くなれるんだな?」

S君がそう言うと、

「……それは君次第だよ、S君。
 もしかしたら、
 仲良くなれないかもしれない。

 でも、君は好きな女の子に
 怖い思いをさせたんだ。

 好きな子には誠実に接しなければ、
 スタートラインにも
 立つことができないだろ?

 すべて君の選択で
 良いも悪いも決まってくる。
 でも、君がもしベストを尽くすなら、
 僕もベストを尽くすことを
 約束するよ」

 

K君がそう言うと、
S君の表情は少しやわらぎ、

「分かった。
 ムイさんには謝罪しよう。
 あと、協力、頼む」

と再度、頭を軽く下げ、
K君と僕に呟いた。

 

「じゃあ、うめぼし君。
 場の調整お願いね」
「えっ!?」

K君の熱弁と
S君の素直さに
感動すら覚えていた矢先、

不意打ちのK君の言葉に
思わず素っ頓狂な声を
あげてしまった。

 

 

そこからは非常に大変でした。
箇条書きで流れを書くと、

 

1.一旦その場でムイちゃんに電話相談
 難色を示すも、2時間後に
 寮の正面入り口に集合。

2.S君の身の上話を聞く。
 (僕に全て任せてK君離脱)

3.2時間後、
 こんなに親身に話を
 聞いて貰ったことがない。と
 感動され気に入られる
 (友達認定)

4.移動
 ↓
 寮の前でムイちゃんと合流、
 お互い誤解が起きていたことを
 説明

5.S君がムイちゃんに謝罪
 ↓
 そのまま3人でご飯
 (S君のおごり)

6.高級中華で北京ダックや
 小籠包食べ放題

7.お酒飲みつつ、
 ムイちゃんとS君の
 関係性修復に努める

8.3人とも上機嫌になり、
 わだかまりが
 なくなった状況で解散。
 お互い連絡先を交換。
 (寮までムイちゃんを送り、
 僕の部屋でS君とサシ飲み)

9.加速するS君との絆
 (ズッ友認定)

10.いつの間にかお互いつぶれて
 床上で就寝。

 朝ガチガチになった身体を引きずり、
 大衆食堂で朝ごはん
 (S君のおごり)

11.そこに黄君が合流

12.そのまま学校をさぼり、
 S君の父君がオーナーの
 レストラン(準備中)に
 連れられて、
 3人で朝から酒盛り

13.黄君にも何故か気に入られる
 (若(S君)の友達は俺の友達的な?)

14.夕方、解放。
 またサシ飲みの約束をして寮へ帰宅。
 ↓
 そのまま就寝

 

……もう滅茶苦茶でしたが、
  丸く収まってよかったです。

K君に文句を伝えましたが、

「うめぼし君ならできると思ってたよ!
 よかったよかった」

と言われ、それ以上
何も言えなかった記憶があります。

 

まあ、とにかく、
S君には好意を持たれ、友達になり、
S君の父君の部下の黄君とも
好意的な関係性を構築し
友達認定された状況となりました。

 

正直、当時呼び出された時は、
どうなることかと思いましたが、
終わり良ければ総て良し、
な感じになってよかったです。

 

では、S君と
どのようにして友達になれたか?を
少し解説すると、

基本としては
相手の話す姿勢に傾聴し、
相手を理解する為に、
相手の感情に寄り添って興味を示し、
相手が欲しい言葉を紡ぎ、
共感をもって親身に接する

 

上記の姿勢を根底において、
自分のことも少しずつ開示し、
相手との距離間を少しずつ埋めていく。

自分ができる範囲で
相手が望むことに協力し、
相手からの信頼を得る。

 

例えば、
少しS君の身の上話を
聞いた時の話をすると、

彼の父君は結構な資産家らしく、
闇が深い稼業も生業としており、
海外を日々飛び回り、

父君との繋がりは
毎月口座に
振り込まれる多額の仕送りと
年に数回の会食のみとのこと。

そこから少し踏み込んで、
色々聞いた結果、

・子供の時から
父の都合で学校には
あまり通えてなく、
友達はいないこと

・自分と他社との接点は、
父君所有の大きな家で働く家政婦や
家庭教師、その他父君の部下数名

・その中でも
 特別仲が良いのは
 黄君や家庭教師の先生と
 世話役の家政婦のみ

・小さい頃誘拐されかけて
 大きなトラウマを抱え、
 引き籠りだった

ということが断片的に分かり、
そこに対して共感した上で、

自分が日本で受けてきた
様々な事象を話し、

S君の身の上に
共感できる根拠を提示し、
S君に更なる興味を持ちつつ

お互いの話を
キャッチボールのように繋げていき、
話題が変わるたびに、

最初はたどたどしく、
だんだんスムーズに会話を広げる。

 

こんな感じの流れをぐるぐる回し、
S君からの信頼を獲得したんですよね。

 

相手から信頼して貰いたい状況の時は、
常に相手ファーストを意識して、

とことん向き合う相手へ
傾聴と共感の姿勢を持ち、
相手が求める態度や
言葉を意識し続ければ
自ずと相手は心を開き、
あなたを魅力的に感じていきます。

 

まあ、この時の僕は
狙ってやった訳ではないので

後々分析したら意図せずやってた、
という言いかたの方が
しっくりくるかもです。

 

根底にあったのは、
相手へのリスペクトだったなぁと
今になって思います。

 

日本に住んでた頃は
否定され続けていた僕が

中国ではそんな僕へ
一切のマイナス感情もなく、

温かく接してくれるムイちゃんや
K君のような存在

S君のように自分が悪いと思った時、
素直に謝罪してくれて
更には自分の身の上を
話してくれる存在。

 

そんな人たちと
出会わせてくれた縁には、
本当に感謝しかないですね。

 

さてさて、
僕のファン(ズッ友認定)と
なってくれたS君とは
その後も交流が続きます。

ただ、世間知らずの彼と
接する内に、
何度か
危ない経験をしてしまう羽目に。

続いて、話すのは
そんな危ない経験の中でも
命の危険に
晒されてしまった時のお話です。

S君と友達になったことで得られた教訓~いのちだいじに~

S君の騒動から4日後、
僕は人生の岐路に立たされてました。

 

 

「乗るのか?乗らんのか?
はっきりしろ」


それぞれのバイクに跨る、
半ギレ状態のS君と黄君。

その人たちを前に
涙目になりながら、

道端の街灯の下で
オロオロしている僕。

 

 

 

時は遡り、数時間前、
夜19時頃。

 

僕は屋台で買った
夕食を食べながら、寮の自室で
学校から
渡された課題をしていました。

 

もうそろそろ終わりそうだなぁ、と
考えた矢先、震える携帯。

 

発信者を見るとS君からでした。

 

 

 

課題を片付けている最中でしたので
電話を取るのを躊躇いましたが、
あとで何か言われるのも
馬鹿らしく感じた為、
電話を取りました。

「どうしたの?S君」

「お!うめぼし君、この後、空いてる?」

「空いてるよ~」

「了解!
 2時間後くらいに
 迎えに行くわ!」

「え、ちょ」

っと待ってと言い切る前に
電話は切れ、
要件を聞きそびれました。

かけ直しても
留守番電話に接続されて
繋がらない。

数分悩んだ末、
とりあえず課題とを片付け、
夕飯を食べた後、

シャワーを浴びて
S君を待つことにしたのです。

 

電話を切ってから、
1時間、2時間、3時間ー

夜中の0時を回っても
S君がくる気配はありません。

 

ベッドで
半分寝かかっていたその時、
マナーモードを
OFFにしていた携帯が
けたたましく鳴り、
半分寝ぼけながら
電話に出ました。

 

「……あい、うめぼしでしゅ」

「うめぼし君?
 寮の正面入口に着いたから、
 とりあえず外に出てきてよ!!」

「えーっと…S君?」

「え?寝ぼけてるの?
 とりあえず早く降りてきて!」

 

そう言うと
声の主は一方的に
電話を切りました。

念の為、履歴を確認すると
“S君”の文字が
最終履歴に
表示されていた為、

部屋着から
いそいそと GパンとTシャツに着替え、

寮の正面入口まで
早足でかけていきました。

 

外に出ると
辺りを生温い風が包み、

汗で湿った肌を
舐めるように撫でます。

街灯に寄って来た虫が飛び回り、

光の中に静かに影を落とす様を見て、

僕の心は、
もう部屋に戻りたい気持ちで
満たされていきました。

 

寮の正面入り口は、
僕が暮らす部屋がある棟から
歩いて10分程の距離です。

何かに追われている気がして、
早足から全力疾走に
切り替わるまで10秒とかかりません。

 

息も絶え絶えで
寮の正面入り口に到着すると、
待っていたのはそれぞれ、
バイクに跨るS君と黄君でした。

 

「おお!来たか!待ってたぜ」

たばこを咥えながら黄君が
手をあげ歓迎してくれました。

「うめぼし君、寝てた?」

S君の質問に息を整えながら頷くと、

「何?寝てただぁ?この薄情者が!」

と黄君は笑いながら言ってきます。

 

「はぁ、、はぁ。。
 ごめん、ちょっと待って、、」

肩で息をする僕を
S君が無邪気な笑顔を浮かべ、

「ああ、いいよ。
 待つから息が整ったら教えて?」

その質問に何度も頷く僕を見て、
黄君は更に笑いました。

笑った拍子に
咥えてたたばこを地面に落そうが
ツボに入ったのか笑い続けました。

 

「息は整った?」

「うん!もうばっちり!
 待たせてごめんね?」

「いや、俺らが遅れたからだし、
 謝らないでよ」

僕の謝罪に
S君は笑顔でそう返してくれました。

 

「ありがとう!
 そういえば、今夜はどうしたの?
 さっきの電話で
 要件聞きそびれちゃったから、
 気になってたんだけど、、、」

「いやぁ、実はうめぼし君と
 夜のツーリングでも
 行こうかと思って、ダメかな?」

「え!ツーリング??」

「うん、ツーリング。バイクで」

バイクを見るのはいいのですが、
乗るのは無理なんです。

その当時は極度の
乗り物酔い体質でしたので。

乗り物に乗ることを
想像するだけでも
何かが込み上げてくるほど、
ダメでした。

 

「あの、、ごめん、
 僕乗り物酔いが凄くて、、、」

「あん?乗り物酔い?
 気合が足りねぇんだよ」

しどろもどろで話す僕に、
黄君がすごんできます。

やっぱ怖いですよね、
威嚇してくる人って。

 

「大丈夫でしょ!
 危ない走り方しないし、
 酔い止め飲めば平気でしょ?
 一緒に走ろうよ!気持ちいいよ!」

S君は無邪気に笑いながら
そう説得してきます。

 

「いや、でも、あの、、」

だんだん弱気になり、
下を俯く僕に、

「え?何?
 俺がこんなに優しく誘っても
 ダメなの?」

S君の笑顔が消え、
その表情に怒りが満ちてきます。

「乗るのか?乗らんのか?
 はっきりしろ!」

うじうじしている僕を見た、
黄君は半ギレの状態で
怒鳴りつけてきます。

 

ああ、なんで
こんな状況になってるんだろう、、、
電話なんか取らなければよかった、、、

 

 

泣きそうになりながら、
後悔の念で潰されそうになっていると、

「うめぼし君、
 電話で空いてるって俺に言ったよね?
 こっちはせっかく迎えに来てるのに、
 何その態度?」

「若の言う通りだ。
 若が貴重な時間割いて、
 お前と会ってるのに
 なんだそれ!舐めてんのか!!」

昔のトラウマが蘇る。

年下、年上関係なく
いじめられっ子たちに苦しめられた日々。

階段から落とされたり、
裸にひん剥かれたり、
殴る蹴るの暴行の挙句、
骨を折られたり、、、

 

そんな昔の光景を
走馬灯のように思い出し、

めまいと立ち眩みで、
とうとう僕はその場に
へたり込んでしまいました。

 

尚も、凄もうとする黄君を
手を上げ遮り、

バイクから降りて、
僕の前に片膝をつき、
悲しそうな顔で
僕の目を見てきました。

「ふぅ、、、
 うめぼし君。無理言ってごめんね。
 でも、僕が君と走りたいのは
 ホントのことなんだよね。
 君は初めてできた
 心許せる友達だからさ」

 

そうか、S君も僕と
同じような気持ちだったんだなぁ、、、

状況は違うかもだけど、
地獄のような孤独を感じていたのは一緒かな、、、

 

ふと、僕の心にそんな気持ちが湧き上がり、
思わず涙が流れました。

 

そんな僕にS君はハンカチをそっと差出し、
黄君に向けて、

「悪いけど、
 近くの薬局叩き起こして、
 酔い止め買ってきてくれる?
 ……うめぼし君も酔い止めあれば
 大丈夫だよね?」

と優しく包み込むようにささやかれ、
思わず頷いていた自分が
そこに居ました。

 

 

「~ッ!?~ッ!~ッ!!!!」

「え?何?なんて言ってるのか
 聞こえないーッ!!!」

水冷エンジンの4気筒をフルに動かし、

水冷エンジン特有の
甲高い音を上げながら、

スピードを上げ高速を
走行するバイクが2台。


後ろから叫んでいる僕の声を
S君は真摯に
聞きこうとしていますが、

風の音と
テンパっている僕自身の叫び声とで、
はっきり言葉になっておらず、
S君の耳には僕の真意は決して届かない。

その悲鳴を独自の解釈で
理解したつもりのS君は、

「うめぼし君が
 楽しそうでよかった!
 スピード上げるね!」

と、その時の僕にとって
死刑宣告よりも重たい言葉を
風に上手くのせて、
僕の耳に届けました。

被っているヘルメットは
お互いハーフヘルメット。
正直、
心の中では複雑な感情が渦巻いて、
思考が停止しかけていました。

 

それでも、はっきり感じていたのは、
あかん、これ死ぬやつだ、
僕の人生はここで終わった、、、
でした。

 

僕が寮の正面入り口でへたり込んだ後、
S君の共感をくすぐる説得と
黄君が買ってきた酔い止めを飲んで

覚悟を決めた僕は、
S君の後ろに乗って、

人生初のツーリングを
びくびくしながら
体験させて貰ってました。

 

最初は法廷速度を守って、
バイクを走らせていたS君でしたが、

「あ、やっぱり
 この速度つまらないね~。
 高速乗ろう!」

と進路を変更し、
それを追うように黄君も走っていきます。

 

高速に乗りまっすぐな道路に
差し掛かった後、

どんどんと僕が
体感したことないスピードまで
上げていきます。

 

120km/h、130km/h、
160km/h、170km/h。

 

もう、バイクから何かの力で
引き剝がされそうになりながら、

情けないけど、
必死でS君にしがみつく僕。

興奮で高笑いするS君。

後ろからぴったりくっついて
走行してくる黄君。

 

 

もう世界が一瞬で変わった感覚。

 

この3人以外、
皆沈黙したんではないか?という錯覚。

 

風の音、S君の笑い声、
甲高いバイク音。

体感温度もかなり低く、
涙と鼻水と風圧で
開かない口から垂れ流す涎で、
顔はぐちゃぐちゃ。

 

「あ!やべっ!!」

 

そんな声をS君が無意識に漏らす。
滲んだ目を必死で開き、
前方を確認すると大きな影が二つ。
二台のトラックが
並走している状況でした。

 

「ーーーーーッッッ!!!!!!!」

 

声にならない、
サルに似た金切り声みたいな
叫び声を

全力で口から発したのは、
後にも先にもその時が最後でした。

このまま速度を
上げたバイクがトラックにぶつかって
僕はぐちゃぐちゃになって死ぬんだな、と
直感で感じ取り、

その時初めて走馬灯を
リアルで体験しました。

 

あ、昔の僕がいじめられてる。

ああ、じいちゃん、優しかったな。

家でも学校でも、居場所なかったな。
寂しい人生だったかも。

友達になった人は翌日、
僕を空気みたいに扱ってきたな。

中国で知り合ったみんな、温かったな、、、。

 

 

「うめぼし君ッ!!
 しっかり捕まってろ!!!」

S君のその一言で、現実に戻され、
僕はS君にもわかるように
大きく何度も頷いた。

 

「おらぁぁぁっぁぁぁああああッ!!!!!」

S君の気合の籠った雄たけびと共に
バイクは更に速度をあげ、
トラック二台のすき間にできた、
バイク一台分の細い車間を駆け抜ける。

 

 

「ーーーーーーーーーーーッ!!!!!」

 

また僕はサルみたいな
甲高い叫び声をあげ、
事の成り行きを静観する。

 

もう少しで二台のトラックの間を
走り切れると思った矢先、

右側のトラックが
少し幅を寄せてきた。

結果、バイクとトラックの
サイドミラーが接触し、
バイクのサイドミラーが折れ、
トラックのサイドミラーも砕ける。

 

しかし、慣性の法則が働き、
二台のトラックよりも
速度を増したバイクは一気に
二台の車間を走り抜けたのだった。

 

S君は変わらず、
興奮からか高笑いを続けている。

恐怖でおかしくなっていたのか、
理由は定かではなかったが、
僕もつられて大きく笑った。

 

 

その後、適当な出口で
高速を降りたS君は、
出口付近の路上にバイクを止めた。

 

二台のトラックの間を
走り抜けた後、
後ろを走っていた黄君とは
はぐれてしまいました。

 

バイクの前でがたがた震えながら
座り込み嗚咽を繰り返す僕に
S君は無邪気な笑顔を向けながら、

「うめぼし君、
 かなりエキサイティングだったね!
 また、一緒に走ろうよ!」

と一言。

 

内心では、
人生で初めて、
言葉では表現できないどす黒い感情が
心の中に湧き上がります。

 

そんな中、
首を縦にも横にも
振り返すことができずに
嗚咽を続けるしか、
その時の僕にはできませんでした。

 

 

結局、いくら待とうが、
電話をかけようが、
黄君にコンタクトを取ることはできず、
その日は帰宅することになりました。

 

行きのバイクの速度とは
打って変わって、
今度は慎重に
法定速度を守りながら走るS君。

 

帰りの速度が変わったのは
彼なりに恐怖を感じた結果なのかな?と
振り返ると、
そう感じました。

 

寮の部屋に着いた僕は
そのままベッドに倒れ込み、

翌日の夕方まで、
起きることはありませんでした。
(授業、無断欠席により、
 課題も無駄になりました)

 

今この記憶を振り返ってみると、
乗り物酔いがひどかった僕が、
なんでS君の誘いに乗ったのか
深く考えましたが、

S君の過去と自分の過去を重ね、
共感したのがトリガーとなり、
自己の都合を顧みず、
S君に対して
利他的な行動をとってしまった。

という現象が発生してしまったのが
大きな要因ですね。



どこかの大富豪が仰ってましたが、
実は「共感性」というのは、
人を動かすための
肝となる要素なんです。


それは、なぜかというと、
「利他的行為」を引き出す力が
「共感」にあるから、です。

人は、共感できる相手に対して
「利他的行動」をとる
傾向にあります。

つまり、
共感できる相手に対しては、
自己の利益を犠牲にしてでも、
相手の利益にかなう行為を
とろうとするのです。


例えば、
面識のない同郷出身の人間同士が
偶然東京で知り合い
盛り上がって、一気に仲良くなるのと
原理は同じです。



共感とは、
仲間を作り、WINWINかつ
自由になる為には
欠かせないピースの一つとなります。

 

その点だけは
ご念頭に置いて生活して頂ければ、

明日からまた違った
晴れ晴れとした景色が
徐々に見えてくると思いますので

非常におススメです。



一旦、上記の死ぬような思いをしてから、
僕はS君との接触は極力控えていました。



その時の僕は、

S君とのツーリングの体験から
生への執着というのが良い意味で強まり、

本能的にS君を避けてしまっていたのです。


この人と繋がっていると
死ぬかも、という気持ちで
心の中が満たされていたので。


(とはいえ、

 その時のチキンな僕は
 完全に関係を断つことができず、

 メールや電話は最低限
 繋がった状態ではありましたが、、、)



半年が過ぎ、
ある日、
S君の誕生日パーティーに
ムイちゃんと誘われたことにより、
僕の人生に好転の兆しが射す、
ある出会いがあったのでした。

それでも人を大切にしたら、とんでもない富を構築できた

S君と最後に会ってから半年が経ち、
ある一通のメールが
僕とムイちゃんそれぞれの携帯に届きました。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
うめぼし君

最近、会ってないけど元気に過ごしてる?
今度の日曜日に
僕の誕生日パーティーを開くので
是非招待したい。
精一杯のもてなしをさせてもらいたい。
最後に会った時、
怖い思いをさせてしまった
罪滅ぼしをさせて欲しい。

じゃあ、誕生日パーティーで待ってるよ。

追伸
ムイさんも誘いました。
来てくれるといいなぁ、、、

S

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

誕生日パーティーなんて、
誘ってもらったのが
人生で初めての経験だったので
一瞬心の中で興奮に満たされましたが、
、、、とはいえ、僕の本能は

「いや、行くのやめときなよ。
 また怖い思いさせられるかもよ?」

理性としては、
「うーん。
 別にムイちゃんも
 誘われてるみたいだし、
 無茶なことはされないんじゃない?

 久々に安全に対面で話す機会だし
 行ってみれば?」

と両極端でしたが、
このまま何もせずモヤモヤしながら
止まっているのもどうかと思い、
ムイちゃんと相談後、
行くことにしたのでした。

 

「さすがお金持ちだねぇ、、、
 こんなパーティー開けるなんて」

「だよねぇ…ハァ。。」

ムイちゃんが目を輝かせて
呟く言葉に僕は同意の言葉を
ため息交じりで呟きます。

 

天井から
煌びやかな光を注ぐ
豪華なシャンデリア、

見たことあるものから
見たこともないものまで
テーブルの上に
ビュッフェ形式で用意された
様々な国の料理、

執事服に身を包み、
訓練された様子で
会場を縦横無尽に
優雅に駆け回るスタッフ、


場内に幾つも設置された
シャンパンタワーの周りには、
高価そうなドレスや
スーツに身を包んだ紳士淑女の皆様、、、


ドレスコードがあることも
聞いていなかった僕は、
Tシャツにジーンズという
ラフなスタイルで

ムイちゃんは
少しお洒落なワンピースを着て、
会場入りしたのでした。

何ここ、結婚式会場?
もう、場違い過ぎて帰りたい、、、


僕がそう思ったのが
顔に出ていたのか、

「私たち場違いだねぇ、、、
 受付にプレゼント渡して帰る?」

とムイちゃんから提案があり、
軽く頷くと二人して踵を返し、
入口にある受付へ歩を進めました。

やっぱ、持つべきものは
以心伝心な頼れる仲間ですね。
お互いの気持ちを察し合える仲間
というのは掛け替えのない財産だな、と
僕は思います。

さて、受付の人に
プレゼントを渡して帰ろうと
外に出た時、

目の前に見覚えのある
白っぽい金髪の兄ちゃんが一人、
たばこの煙を吐き出しながら、

「お!うめぼし!
 久しぶりだな!来てたんか!!」

と、満面の笑みを浮かべて、
黄君が近づいてきました。

「ん?なんで外にいるんだ?
 若には会ったんか?」

「いやぁ、、
 S君がどこにいるかも
 分からなかったし、
 みんなスーツやドレスだからさぁ、、、
 なんか居心地悪くて帰ろうかと、、」

「なんだよ!そんなことで帰るの??
 ちょっと、待ってろ!」

そういうと黄君は足早に受付まで行き、
受付のスタッフに怒声を飛ばしている。

「やっぱ、私、あの人苦手だなぁ、、」

とムイちゃんの呟きが空に溶けた時、
黄君はまた早足でこちらに戻ってきた。

「ドレスとスーツの貸し出しはOKだぜ!
 早く着替えて若に会ってやってくれよ!」

……ここで断ったら、絶対にキレられる、、、
そう思った僕は、
ムイちゃんにそっと耳打ちをして
着替えることにしました。


当時の僕は、
スーツを着る機会なんてほとんどなく
ネクタイすら
満足に結ぶこともできない人間でした。


あたふたしている僕に
見兼ねたスタッフの手伝いもあり、
なんとか着替えて黄君のところに戻ると、
美しいドレスを
身にまとったムイちゃんと

普段髪を下ろして、 目元を隠している状態とは
打って変わり、
オールバックで青い髪を整えている
S君が談笑していました。

、、、どうやら黄君は
空気を読んだみたいで、
一人離れた場所で
煙草をくゆらせています。

僕も空気を読んで離れた場所に
一人黄昏たほうがよいかと
考えていると、

「おーい!うめぼし君!
 こっちにおいでよ!」

とS君に呼ばれて、
おそるおそる近づいていきました。


「うめぼし君、来てくれてありがとう!
 あの、、この前は
 怖い思いさせてごめんね?

 あの後、
 かなり反省してたんだよね。

 初めて心許せる友達ができて、
 もっと僕のこと
 知ってほしくって

 舞い上がっちゃって、、、
 ホント、ごめんね!」



困り顔のムイちゃんをよそに、
勢いよく頭を下げるS君。

好きな子の前で
カッコつけるのは
男なら誰だって
やりたくなるけど

好きな子の前で
周りを気にせず
堂々と謝れることは

誰にでもできること
ではないでしょう。

ましてや、
自分の誕生日パーティ会場の
入り口の前でなんて
僕だったらできない。

想定外のS君の誠意の前で、
僕はしどろもどろに
なってしまいました。

「いや、S君、あのね、
 僕の方こそ、
 悪かったと思ってるんだけど、
 だから、えっと、
 頭を上げてくれると助かるんだけど、、、」

「いや!
 うめぼし君が許してくれるまで!
 僕は君に
 何度でも頭を下げ続ける!!」



いや、ちょっとS君、、、
そんなこと大声で言うから、、
少し離れたところにいる黄君が
めっちゃ睨んできてるじゃないですか、、、。


「ええっと、、、僕は大丈夫だから、ね?
 頭を上げてくれるかな?」

「いや!許してくれるまで!
 僕は頭を上げない!!」


S君の大声を聞いて、
中で歓談していた人たちが様子を見に、
入口まで足を運んでくる。


黄君も凄い形相で
こちらに早足で近づいてくる。

僕は背中に冷たいものを感じつつ、
半ば祈るように
S君の前で膝を折り、叫んだ。


「もう許す!
 許すから、
 許してーーーッ!!!!」

「ぷ、
 あははははははは!!!」

僕が涙目で叫んだ時、
一部始終を見ていた
ムイちゃんが
大きな笑い声をあげ、

僕の叫び声と
ムイちゃんの笑い声を
聞いたS君は

頭を上げ、
安堵の表情で
泣き出しそうな僕と
ツボに入り笑っているムイちゃんを
優しく見つめていた。

 

 


「いやぁ、
 急に笑っちゃってごめんね?
 なんでか、二人のやり取りが
 漫才みたいに見えてきて
 ツボに入っちゃって、、、」

「いや、
 いいんだよ、、、。
 気にしないで、、」



あの後、
S君と黄君は中から
出てくる人たちに声を掛け、
一緒にパーティ会場の中へと 再び入っていきました。


僕はというと、
入口脇にあるベンチに力なく座り、
ムイちゃんが
買ってきてくれた
お茶を飲んで
気持ちを
落ち着かせていました。



「それにしても、S君って、
 うめぼし君のことを
 かなり大事に思ってくれてる
 みたいだったね。

 じゃなきゃ、
 外でまわりを気にせず
 謝ることなんてできないよ」

「確かにそうだね。
 でも、さっきは凄く焦ったよ、、」



鬼の形相になった黄君に
滅茶苦茶にされるかと思った。


ふぅ、と一息ついて
ペットボトルの中のお茶を 飲み干すと、


「うめぼし君!ムイさん!」

という声と共に
S君が中からまた出てきた。



「うめぼし君、
 だいぶ顔色が
 良くなってきたね!

 よかった、、、。
 また、僕が
 暴走しちゃったみたい、、
 ホント、ごめんね!」


「いや、こっちこそごめんね。
 なんだかS君を
 追い詰めちゃったみたいで、
 ホント、申し訳ない、、、」


「いやいや、
 こちらこそ、
 うめぼし君のこと
 追い詰めちゃったみたいで、、」


「いや、大丈夫だから、
 もう許してるし、、」

「いや、でも、、、」

「ストーーーーーーーップ!!!!
 もう、謝罪し合うのは
 これで最後にして!

 今日はS君の誕生日でしょ??」


ムイちゃんの声で
僕とS君はハッと我に返った。

「、、、ムイちゃんありがとう!
 そうだね!
 少し遅くなったけど、
 S君、誕生日おめでとう!」


「S君、誕生日おめでとう!」

「……ああ、うめぼし君、
 ムイさん。。。
 ありがとう。
 友達からお祝いの言葉を
 貰えるのが初めてだから、
 素直に嬉しいよ、、
 ああ、そうだ!
 ちょっと二人に
 紹介したい人がいるから、
 こっちに来てよ!」



軽く返事をした後、
僕とムイちゃんは
先を歩くS君の後ろから
パーティ会場の中に
おそるおそる入っていった。



S君は、歩いている途中、
話しかける人達を軽くいなし、
パーティ会場の奥にある、
少し重厚感のある扉を開ける。


「こっちだよ!」


無邪気な笑顔を浮かべ、
S君は僕とムイちゃんを
扉の中へ誘っていく。


S君に続いて扉の中に入ると、

そこは広く
豪華な装飾が煌びやかに輝く
もう一つの部屋へと続いていた。


高級そうな
樫の木の長机を囲むように
お洒落な
革張りのソファが配置され、

壁際には大きな
観葉植物が置かれている。

長机の上には、
美味しそうな料理と
高級そうなシャンパンが並び、
それをソファに腰掛けながら、

食べている光沢のあるスーツを着て
顎髭を蓄えた紳士が一人。

「紹介するよ。
 あれが僕のパパさ。

 パパー!
 俺の友達を紹介するよ!」

S君に声を掛けられた紳士は
こちらを向くと
僕らに手招きをした。

僕らは長机を挟み、
立ち上がった紳士の目前まで
歩を進める。


「パパ!紹介するね!
 こっちが友達の
 うめぼし君とムイさん!」

「初めまして!ムイです。」

「初めまして、うめぼしです」

「おお!君らがそうか!
 いつもSが
 お世話になってるみたいだね!
 ありがとう!」

顎鬚の紳士、
改めS君パパは
僕らに対して、
丁寧にお辞儀をする。


僕らもつられてお辞儀を返した。

 

そこから、
僕らはソファに座り、
シャンパン片手に
他愛のないおしゃべりをしつつ、

北京ダックや
初めて見るエスニック料理、
様々な動物の形をした
一口サイズのふわふわした クリーム菓子や

白鳥を模した精巧で美しい
飴細工などに舌鼓を打った。

途中、メインの会場に
S君は顔を出しに行き、
S君パパとムイちゃんと僕の
三人になる場面がありましたが、
S君パパのフレンドリーさで
全然苦になりませんでした。

ですが、
一瞬の静寂が部屋を包む時があり、
その際、
S君パパはポツリと
ある質問をしてきました。


「Sは幸せそうだ。
 こんなにいい友達をもてて。
 二人とも、
 この先もできればSと
 仲良くしてほしい。

 あの子、君らに
 迷惑をかけてないかい?」

「いえ、迷惑なんて、
 そんな、、」

「うーむ。
 その様子だと
 あの子は少し暴走して
 しまったみたいだね。


 小さい時、
 Sには学校にも家の事情で
 ろくに行かせて
 やれなかったからね。

 人との距離の取り方が
 下手なんだよな。


 Sがそうなってしまったのは
 私が悪いんだ。
 これからもSには少しずつ、
 人との接し方を教えるから

 だから、
 友達を辞めないでいて
 あげてほしい。

 Sにチャンスをあげてほしい。
 この通りだ」


そう言うとS君パパは
僕らに対し頭を下げた。


「いえ!そんな!
 頭を上げてください!
 S君は良い奴だってことは
 もう知ってますし、
 迷惑をかけられたとしても
 友達だと思ってるので!
 お願いです!
 頭を上げてください!」

「ありがとう」


そう言うと、
S君パパは頭を上げ、
僕とムイちゃんに対して、
柔らかく微笑んでくれました。



「あ、そうだ。
 君らがもし困ったときは
 ここに連絡してきなさい。
 必ず守ってあげるからね」



S君パパが懐から
名刺ケースを取り出し、
二枚名刺を取り出すと

僕とムイちゃんに
それぞれ一枚ずつ
渡してきてくれました。

名刺の肩書は
某有名グループ会社の
オーナーという肩書と

様々な地域を管理する
政府の高官という表記。

それを見た瞬間、
僕もムイちゃんも
目を丸くした記憶があります。

そこから、
また戻ってきたS君を含め、

夜が明けるまで
楽しく談笑をし、

非常に楽しい時間を
過ごさせて頂きました。

 

 

 

後日談になりますが、
一人、夜道を歩いていた時、
ナイフを持った3人組の男の人に囲まれて、
財布や携帯などの貴重品が入ったカバンを
盗られたことがありました。

その時、S君パパに助けを求め、
電話した2時間後、
盗られた貴重品がカバンごと
戻ってきたことがあったんです。

しかも、警察の手は一切借りずに
S君パパ独自のネットワークで
犯人を突き止め、
追い詰めたとのことだったので
驚きです。

S君パパには長い中国生活の中で
助けて貰うことや
別の富裕層の方を
紹介して頂いたく機会も
多々ありましたが、

それはまた別の機会に
語らせて頂ければと思います。

 

 

S君とはあまり関わりたくない
時期も確かにありましたが、

反省した彼は、
僕のことを友達として
かなり大切にしてくれました。

人は変われるんだな、
とその時実感できたのです。

すぐに縁を切る、
ということをしていたら、
S君パパのように
富裕層のトップに君臨する方々との
縁もなかったわけで。

人を見下したり、
反省するチャンスを
与えず縁を切るようなことを
やってしまうと
ご自身が得られたかもしれない

人生の中での
大きな無形資産に
なりうるものも
得られなくなってしまう。

このお話の場合、
僕は縁を切ることはしなかった
(というより、できなかった)けど
結果、未来の自分を
救ったことになりました。

縁を一方的に切る、
ということよりも
人により
適切な距離感を計る
ということが
自由自在にできれば、
縁というのは
身を助く財産となります。

縁というものは
道みたいなもので、
すべての人と繋がっている。


行くべき道を自ら閉ざすような、
自分自身を悪い方向へ
追い込むようなことは
しないように気を付けましょう。


どんな縁も繋がっていれば、
自分を助けることに
繋がりますので。

 

 

p.s. サラリーマンの収入を10倍にする方法

色々書いてきましたが、
S君との縁が切れなくて
ホントよかったなと思ってます。

 

 

真の富の一つでもある
人脈を形成できたのもそうですし、
その人脈のお陰で
中国に居た時は
未来の自分を守ることにも
繋がりました。

 

 

それで現在、
僕がビジネスで
うまくいってるのも、
すでに成功してる人の
教材やコンサルを買ったり、

出会った人たちとの
縁を大切にしつつ、

成功している面を
「真似」してきたからです。

 

 

結果的に
失敗したこともあったけど、
トータルで見ると成功です(笑)

 

 

出ていくお金よりも、
手に入る時間や価値に目を向けて
人生をより豊かにしていきたい
ですね。

 

 

さて最後に、
以前ちょっと聞かれたので、
サラリーマンの収入を
10倍にする方法について
簡単に解説しておきます。

 

 

パッと思いつく必須スキルは2つ。

 

 

まず1つ目が、
共感力」、
そして2つ目が、
対局理解」です。

 

サラリーマン時代に
元の給料を10倍以上に
増やしたことがあるのですが、

その時に専ら
社内外で行っていたのが
上記のスキルを応用した
内容になるんですよね。
例えば、
首を縦に振らない
営業先のキーマン
(決裁権を持つ担当者)
に売り込む時、

聴き手に回り、
その人の境遇や困りごと、
こちらの会社サービスへの不満など
積極的に聴き取り、
担当者の心中を理解して、
共感し続ける。

すると、
不思議なことに
頑なに首を縦に振らない方が
気付けば縦に首を振っている、
という状況を
作りだすこともできるのです。

ファン化の基本は
上記内容ですね。

これを社内外の主要キーマンへ
アプローチしていけば、

半年から1年で成果が生まれ、
給料が10倍以上になることもあります。
(僕は実際になりました)

 

とはいえ、
自社で出世競争したくない、、

会社は保険として
入っているので、
社内では目立ちたくない。

みたいな人も
中にはいると思うんです。

 

そんな人は、小さなビジネスを
自分が所属する会社以外の
商流で始めるのも
一つの手です。

 

ただ、
小さなビジネスを
行うにしても、

仮に1回/1時間/1万円の
単発サービスのみを
リリースするだけだと、
選択肢も少なく、
「3回ぐらいで終わりにしよう…」
なんて人も現れてくるはず。

 

 

例えば
「12回セットで
 98000円(22000円割引き)」
のサービスセットを
用意しておくとか。

2か月パック/半年パック
とかもいいかも。

 

 

顧客から生涯にわたって
得られる利益のことを
LTV(顧客生涯価値)というのですが、
このLTVの最大化を
優先して考えないといけません。

 

 

リピートしてもらえるように
付加価値をつけたり、
顧客に寄り添ったサービスを
複数用意したり。

 

 

あと、
例えばダイエット希望の
人向けのサービスで

住環境の関係で
あまり自宅を
離れられなかったり、

マイペースでサービスを
利用したい人向けに、

プロの知見を盛り込んだ
ダイエットトレーニング講座を
作成し、それを提供するとか。

限定動画20~30本くらいで
数万円みたいな。

 

1週間に1回のzoom相談
(メンタリングサービス)付きで
もう数万くらい
単価を上げてもいいでしょうね。

 


またそこから派生して、
「同じような志の人と繋がりたい」
という意欲高めの人を集めて
コミュニティを
作っちゃってもいいかもです。


結構、
横の繋がりがあると
挫折しにくくなるので。

 

 

あとは
リリースしたサービスの差別化や
リピートファンを増やす為の
工夫をしつつ
自分のブランディングを
SNSやブログでしていけばOK。

3か月もあれば
マネタイズできるかなと。

 


インターネットの威力を使えば
収入10倍は
達成できちゃうんですよね。

ちなみにこれは、
本質を抑えることができれば、
どの業種・職種であってもイケます。

 

 

ぜひ参考にしてみてください。

借金10億で鬱病だった僕が「ファン化集客術1本」で逆転した秘密をまとめた人気書籍が0円で読めます

僕はファン化集客術に出会い、
32歳の時から
月収で70万以上を継続的に稼いでます。


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もともと借金10億の家に生まれ、
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そんな僕でも、ファン化集客に出会い、
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ファン化集客術を広める為、
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だいたい20分ぐらいでサクッと読めるので、
ぜひ興味があれば読んでみてください。


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